「英語は、毎日聞き流していれば自然に聞き取れるようになる」
そう考えて、通勤中や家事の合間に英語音声を流している方もいるかもしれません。
結論からお伝えすると、意味の分からない英語をBGMのように流すだけでは、英語力は伸びにくいと言えるでしょう。
一方で、内容を理解した音源を繰り返し聞いたり、文字や映像と結びつけたりすれば、聞き流しを英語学習に役立てることはできます。
大学英語講師はむ先生英語講師の「はむ先生(村上里実)」です。教歴は15年、大学で非常勤講師を務め、第二言語習得を専門としています。
大切なのは、英語を聞いた時間の長さではありません。
聞こえてきた英語の音と、意味が結びついているかどうかです。
これは、子どもにも大人にも共通する、英語学習の基本です。
この記事では、
・英語の聞き流しが意味ないと言われる理由
・意味のある学習に変える方法
を解説します。
英語の聞き流しは意味ないと言われる3つの理由

英語の音声を流しておくだけでは、なぜ十分な効果が出にくいのでしょうか。
主な理由は、次の3つです。
意味の分からない音はBGMになってしまう
英語を聞いて理解するためには、音が耳に入るだけでは足りません。
たとえば、次の英文を聞いたとします。
He was about to leave when the phone rang.
単語や文法を知らない人にとっては、何度聞いても英語の音のかたまりです。
一方、英文の意味を理解している人なら、「彼が出かけようとしたとき、電話が鳴った」という場面を思い浮かべられます。
同じ音声でも、聞く人が持っている知識によって、頭の中で行われる処理は違います。
英語を聞いて理解するときには、
- 音の切れ目を見つける
- 単語を思い出す
- 文の形を捉える
- 意味を組み立てる
- 場面を思い浮かべる
といった処理が必要です。
意味の分からない英語を流し続けても、音と意味が結びつかなければ、学習材料として処理されないまま通り過ぎてしまいます。
音に慣れることと理解できることは違う
英語をたくさん聞けば、英語特有のリズムやイントネーションに親しむことはできます。
しかし、音に慣れることと、内容を理解できるようになることは同じではありません。
英語の歌を繰り返し聞き、メロディーに合わせて歌えるようになっても、歌詞の意味まで分かっているとは限りません。
聞き流しでも、似たことが起こります。
英語らしい音やリズムに親しむことはできても、それだけで語彙や文法、文章の意味まで身につくわけではないのです。
聞き取れるようになるためには、耳から入った音が、すでに知っている単語や表現と結びつく必要があります。
難しすぎる音源を選んでいる
何を聞こうかと考えたときに、ニュースや海外ドラマ、ネイティブ向けのPodcastなど、難しい音源を選んでしまうことがあります。
本格的な英語をたくさん聞いたほうが、早く上達するように感じるからです。
年齢に合ったもの(興味にあったもの)を選ぶため、と言ってもいいかもしれませんね。
しかし、ほとんど意味を理解できない音声は、学習教材としては難しすぎます。
知っている単語がほとんど出てこなければ、文の区切りも分かりません。何について話しているのかも想像できないため、英語の音と意味を結びつけることができません。
聞く量を増やす前に、自分がある程度理解できる音源を選ぶことが必要です。
英語の聞き流しに効果が出る3つの条件

英語の聞き流しは、どのような場合にも意味がないわけではありません。
次の条件がそろうと、聞き流しを復習や多聴に活用しやすくなります。
内容を一度理解している
聞き流しに使いやすいのは、すでに一度学習した音源です。
最初に英文や字幕を読み、単語や内容を確認しておけば、もう一度音声を聞いたときに、意味や場面を思い出せます。
分からない英語を繰り返すのではなく、分かった英語を繰り返し聞くのが基本です。
一度理解した音源であれば、その後は家事中や移動中に聞いても、復習として役立ちます。
反対に、最初から最後までほとんど意味が分からなかった音源を、何度流しても理解につながりにくいでしょう。
自分にとって難しすぎない
聞き流しに使う英語は、大まかな内容を理解できる程度の難しさが適しています。
すべての単語を知っている必要はありません。
ただし、何について話しているのか分からない音源よりも、
- 場面を想像できる
- 話の流れを追える
- 知っている単語や表現が多い
- 文字や映像があれば理解できる
- 一度聞いたことがある
という音源を選ぶほうが、英語の音と意味を結びつけやすくなります。
「少し簡単かな」と感じるくらいでも構いません。
リスニングでは、難しいものに耐えることより、理解できる英語を積み重ねることが大切です。
同じ音源を繰り返し聞く
毎日違う英語を流すより、内容を理解した音源を何度か繰り返すほうが学習しやすくなります。
1回目は聞き取れなかった部分が、繰り返すうちに少しずつ分かるようになるからです。
- 今、知っている表現が聞こえた
- ここで単語同士の音がつながっている
- 文字を見なくても場面が浮かんだ
と気づくことが、リスニング力につながります。
なお、英語学習では「多聴」という言葉も使われます。
多聴とは、ある程度内容を理解できる英語を、まとまった量聞くことです。聞いている本人が、話の流れや大まかな意味を追えていることが前提になります。
一方、一般的にイメージされる聞き流しは、内容を理解できているかにかかわらず、英語を流しておく方法です。
目指したいのは、ただ長時間英語を流すことではありません。
理解できる英語を、たくさん聞くことです。
英語初心者の聞き流しを意味のある勉強に変える方法

英語初心者の場合は、最初から音声だけで理解しようとしなくても構いません。
文字や映像の助けを借りながら、少しずつ「分かる英語」を増やしていきます。
最初は文字や映像と一緒に確認する
まずは、英文や字幕を見ながら音声を聞きます。
動画であれば、登場人物の表情や動作、周囲の状況も、意味を理解する手がかりになります。
文字を読み、場面を見ながら聞くことで、英語の音と意味を結びつけやすくなります。
最初から音声だけにこだわる必要はありません。
一度、文字や映像を使って内容を理解することが、その後の聞き流しの準備になります。
分からない単語を調べすぎない
聞こえてきた英語を、一語ずつすべて日本語に訳す必要もありません。
細かく調べすぎると、音声を聞くこと自体が負担になり、続きにくくなります。
まずは、
- 誰が話しているのか
- 何が起こったのか
- どのような気持ちなのか
- 話の大まかな流れは何か
を理解できれば十分です。
何度も出てくる単語や、内容を理解するうえで重要な表現を中心に確認します。
すべてを完璧に理解してから次へ進む必要はありません。
現役英語講師はむ先生調べないと全く分からないという場合には、レベルを下げましょう!
同じ音源を何度か聞く
内容を確認したら、同じ音源を繰り返し聞きます。
たとえば、次のように少しずつ補助を減らしていきます。
1回目:英文や字幕を見ながら聞く
2回目:映像を見ながら聞く
3回目:音声だけで聞く
4回目以降:家事中や移動中に聞く
文字で知っている英語を、耳でも分かる英語へ変えていくイメージです。
毎回、新しい教材へ進む必要はありません。
聞こえる部分が増えるまで、同じ音源を使って大丈夫です。
ときどき集中して聞き直す
家事中や移動中に聞き流すだけで終わらせず、ときどき音声に意識を向けて聞き直します。
- 前より聞こえる部分が増えたか
- どこで単語の音がつながっているか
- 英文を見なくても意味が浮かぶか
- 聞き取れない部分が毎回同じか
を確認します。
集中して聞く時間と、気軽に繰り返す時間を組み合わせることで、聞き流しを英語学習に変えやすくなります。
最後に、文字や映像なしで内容を理解できるようになったら、その音源は「ながら聞き」(=聞き流し)にも使いやすくなっています。
中級者以上なら英語の聞き流しにも意味がある

ある程度英語を理解できる人であれば、聞き流しやながら聞きも活用しやすくなります。
知っている単語や表現が多く、音声を聞いただけで話の流れを追えるからです。
一度学んだ教材を復習に使う
授業や教材で一度学んだ英語は、聞き流しに向いています。
内容をすでに理解しているため、音声を聞いたときに、単語や文の意味を思い出せるからです。
リスニング教材を一度解いて終わりにするのではなく、その後も繰り返し聞けば、復習用の音源として使えます。
新しい教材を次々に増やすより、学習済みの音源を再利用するほうが効率的な場合もあります。
内容を知っている作品を選ぶ
中級者以上であれば、次のような音源も使いやすいでしょう。
- 一度見た英語の動画
- 内容を知っているオーディオブック
- 授業で学んだ音声教材
- 興味のある分野のPodcast
- 字幕付きで見たことのあるドラマ
- 日本語で内容を知っている物語
内容を知っていれば、聞き取れない部分があっても、前後から意味を推測できます。
自分がすでに持っている知識を利用できるため、完全に初めての内容よりも理解しやすくなります。
ながら聞きは復習として使う
家事や通勤をしながら聞く場合、音声だけに集中することはできません。
そのため、ながら聞きは新しい英語を学ぶ時間ではなく、一度理解した英語を忘れないための復習時間として考えるとよいでしょう。
集中して内容を確認する時間と、気軽に繰り返す時間では、役割が違います。
聞き流しだけですべてを学ぼうとせず、復習の一部として使うことがポイントです。
子どもの英語の聞き流しは意味ない?

子どもの英語でも、音声を流しておくだけで、自然に英語を理解し、話せるようになるわけではありません。
ただし、子どもは映像や絵、動作とことばを結びつけながら学ぶことができます。
そのため、大人が英文や字幕を確認する代わりに、子どもには英語が使われている場面を見せる方法があります。
映像や物語から意味を受け取れるようにする
子どもの場合は、
- 英語のアニメを映像と一緒に見る
- 音声付き絵本で絵を見ながら聞く
- 一度見た動画の音声を繰り返し聞く
- 歌に合わせて体を動かす
- 実際のやり取りの中で英語を使う
といった方法があります。
たとえば、登場人物がドアを開けながら「Open the door.」と言えば、子どもは映像と音から意味を推測できます。
音声だけを切り離して流すよりも、英語の音を絵や動作、場面と結びつけることが重要です。
一度、映像や絵本で内容を理解した作品なら、その後に音声だけで聞くことにも意味があります。
子どもが頭の中で、登場人物や場面を思い出せるからです。
小学生以降も理解できる英語を選ぶ
小学生以降も、基本的な考え方は大人と同じです。
ほとんど理解できない英語を長時間流すより、内容を理解できる動画や音声付き絵本を選びます。
- 一度映像で見たアニメを音声だけで聞く
- 読んだことのある英語絵本の朗読を聞く
- レッスンで使った教材の音声を聞き直す
- 好きな物語のオーディオブックを聞く
といった方法が取り入れやすいでしょう。
子どもが内容を知っている作品なら、音声だけでも場面を思い出しやすくなります。
ただし、英語を聞くことだけで、話す力や読む力まで自然に育つわけではありません。
成長に合わせて、英語を使う機会や文字に触れる機会も加えていく必要があります。
赤ちゃんの聞き流しは別に考える
赤ちゃんへの英語の聞き流しは、大人や、ある程度成長した子どもの英語学習とは少し分けて考える必要があります。
大人の場合は、一度内容を理解した英語を繰り返し聞くことが、聞き流しの基本です。
子どもも、ことばや世界についての知識が育ってくると、映像・絵・前後の場面などを手がかりに、知らない英語の意味を推測できるようになります。
しかし、赤ちゃんは母語も身の回りについての知識も、これから身につけていく途中です。
だからといって、英語音声をただ流しておけば、赤ちゃんが自然に英語を身につけるとも言い切れません。
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▷ 0歳の英語に意味ない?研究で分かっていること・いないこと
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新生児期から始める必要があるのか、何か月頃から取り入れるか、その後どのように発展させるかは、こちらの記事をご覧ください。
まとめ|英語の聞き流しは「分かる音源」でこそ意味がある

英語の聞き流しは、すべて意味がないわけではありません。
ただし、意味の分からない英語をBGMとして流しているだけでは、英語力は伸びにくいでしょう。
聞き流しを英語学習に役立てるためには、
- 内容を一度理解する
- 難しすぎない音源を選ぶ
- 文字や映像と一緒に確認する
- 同じ音源を繰り返す
- ときどき集中して聞き直す
ことが大切です。
英語を何時間流したかよりも、英語の音を聞いたときに、意味や場面が浮かぶかどうかを確認してみてください。
分からない英語を長時間流すのではなく、分かる英語を繰り返し聞く。
この使い方であれば、聞き流しは英語の音と意味をつなぎ、リスニング力を育てるための復習として活用できます。
ご家庭に合った進め方を一緒に考えることもできます。

