「多読が良いと聞いて始めたけれど、続きません」
「英語の多読だけで進めた方がいいですか?」
「多読、うちの子にできるかな」
おうち英語のご相談の中で、よく耳にするお悩みです。
けれども、少し立ち止まって考えてみてください。
日本語の読書でさえ、毎日欠かさず本を読み続けられる人は、大人でも多くありません。
大学英語講師はむ先生英語講師の「はむ先生(村上里実)」です。教歴は15年、大学で非常勤講師を務め、第二言語習得を専門としています。
それなのに、英語となると「多読は毎日続けなければ意味がない」と思い込んでしまう。
もしかすると「多読」という言葉そのものが、多読のハードルを上げているのかもしれません。
この記事では、
・多読が続かなかったわが家の実例とそれでも英語力が伸びた理由
・おうち英語は多読だけにするべきかへの私の答え
・「読む波」を呼び込む環境作り
についてお話しします。
そもそも英語の多読とは?基本の考え方

多読とは、やさしい英語の本をたくさん読むことで、英語力を自然に伸ばしていく方法です。
大人の英語学習の世界では、多読の進め方として次の3つの原則がよく知られています。
- 辞書を引かない
- わからないところは飛ばして読む
- 合わないと思ったら途中でやめて、次の本へ進む
一語一語を訳しながら丁寧に読む「精読」とは違い、多読では意味の細部にこだわらず、お話を楽しみながら大量の英語に触れることを大切にします。
おうち英語の多読も、基本の考え方は同じです。
ただし、子どもの場合は「勉強法」として取り組むというより、絵本や読み物を通して英語の世界を楽しむことが出発点になります。
- 絵の助けを借りながら、意味がなんとなくわかる本を読む
- 音声付きの本で、耳と目の両方から英語に触れる
- 「わかった?」「これは何?」と確認しない
親が意識することは、この程度で十分です。テストのように理解度を確かめるのではなく、子どもが「面白かった」と思えることを最優先にします。
そして、多読で読む力が育つ前提として、聞いてわかる英語の土台が必要です。
おうち英語では、アニメや動画、読み聞かせで耳を育てる時期があった方が、文字を読む段階(おうち英語フェーズ3)へ無理なく進むことができます。
「多読」という言葉が背負いすぎているもの

多読の考え方そのものはとてもシンプルです。
ところが、「多く読む」「続ける」という言葉の響きを、真面目な親御さんほど重く受け止めてしまうようです。
- 毎日読ませなければいけない
- 100万語という目標を目指さなければいけない
- 読まない日が続くと、これまでの積み重ねが無駄になる
- 続けられないのは、親のサポートが足りないから
こうした思い込みがあると、子どもが本を読まない時期に入ったとき、親の方が不安になってしまいます。
「せっかく買った本を読んでくれない」「多読が続かないうちの子はダメなのかな」と焦る気持ちが、かえって子どもを本から遠ざけてしまうことも少なくありません。
現役英語講師はむ先生やらされていると感じとると、誰でも嫌になってしまうものです
わが家の実例|息子の読書は「波」だらけ

わが家の息子は、4歳ごろから何だかんだと色々な本を読んできました。
とはいえ、毎日欠かさず読んできたわけではありません。
振り返ってみると、本をよく読む時期が1年に何度かやってくる、という感じ。
息子の読書のペースは、満ちたり引いたり「波」のようでした。
そして正直に言うと、この波は、息子の波というより親である私が原因でした。「多読を続けよう」と思って頑張るのですが、少し経つと親の方が息切れしてしまう。
特に幼児期は、子どもだけの力で読書を続けることは難しく、本を用意して、隣に座って、一緒に読む——親の力が大きくものを言います。でも、親の私がなかなか継続できない、というのが現実でした。
だから、やったり、やらなかったり。
それでも、長い時間でとらえてみれば「結構読んでいたな」という印象です。
一方で、読まない時期は、英語のアニメを見たり、動画を見たりして、英語には触れ続けていました。まったく何もしていないという期間はありません。
そして小学3年生になった今、やっと自分から本を読もうとするようになりました。
ここまで来るのに、きれいな右肩上がりの継続なんてありませんでした。読む▷読まないという波を何度も繰り返しながら、それでも英語との接点だけは切らさずにきた結果です。
「毎日読む」を目標にしていたら、きっと途中で親子ともに苦しくなっていたと思います。
親の波も、子どもの波も、あって当たり前。そう構えることで、読む力は無理なく育っていきました。
(※4歳から7歳ごろに読んできた本はこちらの読書記録にまとめています)
読まない時期も、英語のインプットは止まっていない

「本を読まない時期があっても伸びる」と聞くと、不思議に感じるかもしれません。
ここで大切なのは、「読書の波」と「英語に触れることの継続」を分けて考えることです。
第二言語習得(SLA)の研究では、言葉の力はインプットの量に支えられて育つと考えられています。そしてインプットは、本を読むことだけではありません。
アニメや動画を見ること、歌を聞くこと、これらもすべて立派な音声インプットです。
本を読まない時期にアニメや動画を見ている子は、耳からのインプットを続けています。聞いてわかる言葉が増えていれば、次に読む波が来たとき、その言葉たちが文字と結びついて、一気に読める世界が広がります。
つまり、読まない時期は「止まっている時間」ではなく、次の波のための土台を育てている時間になるのです。
「話せるのに読めない」というお子さんも、この土台がしっかり育っているからこそ、読みにつなげやすい状態だと言えます。
詳しくは英語が話せるけど読めない子|会話の先へ進む「読む力」の育て方でお話ししています。
おうち英語は多読だけにする?多読は選択肢の1つでいい

さて、タイトルの問いに戻りましょう。
おうち英語は多読だけにするべきなのでしょうか。
私の答えは、「多読だけでもいいし、多読だけにしなくてもいい」です。
本が大好きで、放っておいても読み続ける子なら、多読を中心におうち英語を進めて何の問題もありません。
一方で、読む波が来たり引いたりする子なら、アニメ・動画・歌・オンライン英会話など、他の取り組みと組み合わせて進めればいい。
大切なのは、多読を「やらなければいけない課題」にしないことではないでしょうか。
おうち英語の取り組みの1つとして多読があり、その比重は子どもの興味に合わせて動いていい。
選択肢を複数持っている家庭は、1つがうまくいかない時期に別の入り口から英語に触れ続けられるので、結果として挫折しにくくなります。
「多読だけ」と決めてしまうと、読まない時期=英語が止まる時期になってしまう。
これが、多読だけに絞ることの一番のリスクだと私は考えています。
柔軟に、臨機応変に英語の環境を用意していくのがよいのではないでしょうか。
なお、小3、4以降にアカデミックな英語力を目指す段階になると、読書は『選択肢の1つ』から『必須の道具』に変わっていきます。
詳しくは、9歳の壁は英語にも!会話からアカデミックレベルへ進むには読書をご覧ください。
「読む波」を呼び込む環境作り

読まない時期を受け入れるといっても、ただ待つだけではありません。
波が来たときにすっと本に手が伸びるよう、環境を整えておくことはできます。
現役英語講師はむ先生コツをお伝えします!
手の届くところに本がある
子どもの生活動線の中に、本がある状態を作りましょう。
本棚の奥ではなく、リビングの手に取りやすい場所に数冊置いておくだけでも違います。
保護者があえて子どもの前で本を開いてみる、というのもおすすめです。
レベルに合う「次の一冊」を切らさない
波が来たときに、ちょうど読める本がないと、せっかくの波を逃してしまいます。
今のレベルより少しやさしいくらいの本を用意しておくのがコツです。
- 読み始めの時期なら:First Little Readersやオックスフォードリーディングツリー(ORT)
- 自分で読み始めたら:Elephant & PiggieやPete the Cat
- 少し長めの本に進むなら:Frog and ToadやNate the Great
- 章立ての本に挑戦するなら:Magic Tree House

どの本をどの順番で進めるかは、5つの手順に分けた地図の記事にまとめています。
今のお子さんの手順がわかると、「次の一冊」も選びやすくなります。
▷ 英語多読の進め方ロードマップ|読み始めからチャプターブックまで5つの手順
記録は「義務」ではなく「波が来たときの楽しみ」に
多読の記録は、続けるための義務にすると苦しくなります。
波が来ているときに、読んだ本が本棚に並んでいくのを親子で眺めて楽しむ。
そのくらいの位置づけがちょうどいいと思います。
読んだ本を登録するだけで本棚に背表紙が並び、語数も自動で計算される無料の多読アプリを作りましたので、よければ波が来たときのお供にどうぞ。

おうち英語の多読でよくあるつまずきパターン

最後に、多読が苦しくなってしまう典型的なパターンを3つ挙げておきます。
どれも、熱心なご家庭ほど陥りやすいものです。
レベルの高すぎる本を選んでしまう
「せっかく買うなら長く使える本を」と、今の力より難しい本を選んでしまうパターンです。
わからない本は、子どもにとってただの苦行になります。
多読の本選びは「少しやさしすぎるかな」と感じるくらいがちょうどよいと思ってください。
すらすら読める体験の積み重ねが、次の波を呼びます。
読んだ後に理解度を確認してしまう
「どんなお話だった?」「この単語の意味わかる?」という確認は、読書をテストに変えてしまいます。
親としては成長を確かめたい気持ちがあるのですが、ここはぐっとこらえて、子どもが話したくなったときに聞き役に回るのがおすすめです。
大学英語講師はむ先生まじめな保護者さんほど、聞いてしまう気がします
記録やノルマが目的化してしまう
語数の記録や「1日1冊」のノルマは、うまく機能しているうちはモチベーションになります。
しかし、達成できない日が続くと一気に負担へ変わります。
記録が苦しくなってきたら、いったん手放して大丈夫です。
波が来たときにまた再開すればいい、くらいの気持ちでいましょう。
多読についてよくある質問

Q. 多読は何歳から始められますか?
読み聞かせを含めるなら、0歳からでも始められます。
子どもが自分で読む多読は、聞いてわかる英語がある程度育ち、フォニックスなどで文字と音のつながりを学び始めてから。
おうち英語では小学校入学前後に始まるご家庭が多い印象ですが、お子さんの興味が最優先です。
詳しくはどうしたら子どもが英語を読めるようになりますか?もご覧ください。
Q. 1日何冊、何分くらい読めばいいですか?
決まりはありません。
「毎日〇冊」と決めるより、読みたいときに読みたいだけ読む方が、子どもの多読は長続きします。
波が来ているときはたくさん、来ていないときはゼロでもいい。
年単位で見て英語との接点が続いていれば、それで十分です。
Q. 子どもが全然読まない時期があります。やめさせるべき?
やめさせる必要も、無理に読ませる必要もありません。
読まない時期は、アニメや動画などの音声インプットに切り替えて、英語との接点だけ保っておきましょう。
耳からのインプットが続いていれば、読む力の土台は育ち続けています。
Q. 音読させた方がいいですか?黙読でもいい?
どちらでも構いません。
読み始めの時期は、音声を聞きながら指でなぞったり、声に出して読んだりすることが自然に起こります。
読む力がついてくると黙読に移っていきますが、これも子どものペースに任せて大丈夫です。
Q. 紙の本とアプリ、どちらがいいですか?
どちらにも良さがあります。
紙の本は手元に置いておける安心感があり、絵本ナビえいごやOxford Reading Clubのようなアプリ・サブスクは、コストを抑えてレベル別に大量の本へアクセスできるのが魅力です。
個人的には、1冊読み切ったという達成感も感じられますし、目につく所に置いておけるので、幼いお子さんほど紙の本を用意してあげたいと感じます。
一方で、波が来たときに「次の本がない」状態を避けられるという意味では、アプリの読み放題はおうち英語の多読と相性が良いと感じています。
まとめ|続かないのは失敗ではなく、波のあいだ

多読が続かないことは、失敗ではありません。
子どもの読書に波があるのはもちろん、それを支える親にも波があって当たり前。
波が引いている時期も、アニメや動画で英語に触れてさえいれば、次の波のための土台は育ち続けています。
多読はおうち英語の選択肢の1つです。
多読だけでもいいし、他の取り組みと組み合わせてもよいでしょう。
「毎日読ませなければ」「私が頑張り続けなければ」という思い込みを手放して、親子の波に寄り添いながら、細く長く続けていきましょう。
わが家も、波を繰り返しながらここまで来ました。
読まない時期のお子さんを見て不安になったとき、そして頑張れない自分に落ち込んだときは、この記事のことを思い出していただけたら嬉しいです。
🐹 はむ先生のおうち英語相談室(Noteメンバーシップ)
「うちの子の場合はどうすれば?」に、SLA研究×8年の実体験からお答えする質問箱です(匿名OK)。多読アプリへの本の追加リクエストも受付中。
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