コラム・雑感

【大学講師が助言】子供の英語いつから始める?脳科学からの知見

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子供の英語教育をいつから始めるのかという問題は、親を悩ます事柄の1つだと思います。

外国語は0歳から始めるのが最も効果的であるという説を耳にすることもあるでしょう。

現役英語講師
はむ先生

はじめまして。
英語講師の「はむ先生」と申します。

教歴は15年ほど。現在は子育てをしながら、大学で非常勤講師として働いています。

個別相談も行っています。どうぞお気軽にご利用下さい!

私は大学院で英語習得や英語教育を専門に学んできましたが、生まれた我が子を前にすると戸惑うことばかりでした。

それでも、過去の調査研究で明らかになっている「人間の言語発達」に関する専門知識は多くのことを教えてくれました。

この記事では、

  • 子供の英語教育をいつから・どのように始めるのかについての判断基準

となるような、科学的な知識を共有したいと思います。

参考にしていただければ幸いです!

脳科学から理解する|いつから始める子供の英語

人間の行動の全ては脳に司ります。

言語について脳科学の分野で研究されていることは、

  • 脳はどのように言葉を生み出すのか
  • 脳のどこで言葉が作られているのか
  • 言葉を理解する場所と、使う場所は異なるのか

など、もっと大きな領域の話になってしまいます。

脳のウェルニッケという分野で言葉は理解されて…という話をしても、子供の英語教育を考える際には役立ちません。

この記事では、人間が外国語を習得することについて、第二言語習得の分野で明らかになっていることについて見ていきたいと思います。

言語習得の効率だけを考えれば0歳がベスト

人間の脳の働きから言語習得のことだけを考えれば、生まれたばかりの赤ちゃんが最も効率よく英語習得ができると言えます。

英語に限らず世界中のどんな言葉でも習得できるのが、生まれたばかりの赤ちゃんです。

しかし、人間はそんなに単純ではないことは明らかで、単に言葉を記憶するロボットではないので健全な心の成長を伴う必要があります

生まれてからの数年で、

  • この世界は安心できる場所であり
  • 自分は守られている存在である

と子供が感じられることは、生涯に渡って幸せに生きるために必要な要素となります。

専門用語で愛着(あいちゃく)と呼ばれている、保護者と子供の間にできる絆の形成には、保護者が自由に使える言葉である「母語」が重要な役割を果たします。

私は理論的には0歳からの言語教育が効率がよくとも、0歳は保護者が使う母語習得を優先すべき時期だと考えています。

▷ 詳しくは、こちら

脳科学から理解する|子供の言語形成期

音楽と英語は「幼いときから始めるべき」というような話を、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

これは言語科学的にも一理あり、0歳の赤ちゃんは自分の周囲で話されている言語に必要な音を優先的に習得するようになるためです。

専門用語では刈り込みと呼ばれる現象で、具体的には生後6カ月から12か月の間に無意識に行われます。

これは生まれ落ちた世界で生き抜くために、生得的に人間に備わっている能力と言えます。

言い換えると、子供に英語を聞き取れる耳を残しておくためには、日常で英語を耳にできる環境を用意する必要があると考えられます。

現役英語講師
はむ先生

母語と外国語のバランスが重要です

子供の言語形成期は0歳から15歳頃まで

人間には言葉を習得しやすい時期が存在し、0歳から15歳がその年齢にあたります。

専門家はそれを言語形成期と呼んでいます。

言語形成期前半

0歳から8歳頃の母語の獲得において最も大切な時期で、自然に言葉を習得できるという特徴があります。

言語形成期後半

8歳から15歳頃を指し、理論的思考を伴う高度な言語力を獲得していく時期です。

現役英語講師
はむ先生

言語形成期は前半と後半に分けられ、その特徴と共に理解されています。

少し前まで英語教育は中学1年生から開始されていたように、何歳になっても外国語を習得することは可能です。

しかし、言語形成期前半にあたる子供の方が「苦労なしに」「効率よく」言葉を身に付けられると言えます。

脳科学から理解する|子供の英語授業はいつからが適正か

2020年より正式に、小学校から英語授業が始められることとなりました。

言葉を自然に習得できる特徴をもつ年齢は、0歳から8歳頃(言語形成期前半)です。

この点を考慮しながら、

  • 小学校での英語授業の現状
  • 小学校での英語学習の影響

について、見ていきたいと思います。

小学校教育における英語授業の現状

2020年より日本の英語教育は学習指導要領が変わりました。

小学校の英語授業は3年生から開始され、小学校5年生からは科目として試験も実施されます。

小学校中学年では年間30単位時間程度、高学年では年間70単位時間程度の設定です。

現役英語講師
はむ先生

多くの学校では外国語活動として小学校1年生から導入されていることも多いようです。

小学校3・4年生は「聞くこと」「話すこと」を中心に、5・6年生になると「読むこと」「書くことも」も導入されます。

2020年より全面的に実施されるようになった小学校英語ですが、2017年より段階的に小学校での英語学習は取り入れられてきました。

最初は音声中心の学習のみでしたが、小学校で学んできたことが、中学校での英語学習へ円滑に接続が難しいという課題が浮上し、読み書きも組み込まれることになりました。

小学校からの英語学習で英語嫌いに?

言語形成期前半の子供達は、言葉を耳にしているだけで言葉を習得できる特徴をもっていました。

言葉を耳にしているだけで言語習得ができるというのは、言い換えると、聴覚情報が優先される年齢ということです。

耳から聞いた外国語に抵抗を示すことなく、聞きなれない外国語の音声でも聞き取ることができ、言葉を身に付けられます。

この能力を持つのが言語形成期前半の子供達までと考えると、英語活動が始める小学校3年生はぎりぎりの年齢です。

そこには個人差がありますので子供によっては文字情報が優先になり、聞きなれない外国語に抵抗を示す場合もあると考えられます。

現場の先生たちは日々努力されていますが、小学生の英語嫌いも少なからず増えている現状が見られるのです。

その主な理由は、「英語を聞いても何をいっているか分からない」というものです。

言語形成期の観点から見ると、もう少し年齢を早めて英語に慣れることで抵抗なく英語学習に取り組める可能性が考えられます。

現役英語講師
はむ先生

英語はいつから始めるのが良いのか、見ていきましょう!

脳科学から理解する|子供の英語はいつから始めるのが正解か

日本語の読み書きができるようになっている小学校3年生頃からの英語学習では、身近ではない外国語に抵抗を示す可能性が高まります。

もう少し前に英語を聞かせ始めることで、外国語に抵抗感をもつことなく習得できると言えるでしょう。

この「もう少し」の見極めが難しいところなのですが、より良いタイミングを科学的な知見から考えていきたいと思います。

外国語学習環境でバイリンガルは育たない

英語学習を考えるとき、専門家の間では学習環境を

  • 日本のような英語が日常で使われない外国語学習環境
  • アメリカやカナダで生活しながら英語を学ぶ第二言語学習環境

に分けて考えます。

この記事を読まれている親御さんのほとんどは、ご夫婦ともに母語は日本語で、日常生活の中で英語が必要とされない外国語学習環境にお住まいだと思います。

この場合、赤ちゃんの頃から英語を聞かせたり、プリスクールなどに通わせたりしても、英語がネイティブ言語になることはまずありません

この点は、子供の英語教育を考える上で大切な視点だと思います。

2つの言語を年齢相応レベルに習得しているバイリンガル人口は、世界的に見ても数パーセントしか存在しません。

0歳の赤ちゃんを前にバイリンガルにさせようと躍起になり、英語時間を確保する必要はないと私は考えています。

現役英語講師
はむ先生

国際結婚の場合は、両親のどちらかの母語が英語になるので、また条件がことなります。

母語である日本語習得レベルが全ての目安

子供の英語習得を考える際に、

  • 外国は母語レベルを越えることはない

ことは覚えておきたい点です。

日本語で論理的に言葉を使えないのに、言語力がさらに低い英語でそれができることは無いと言えます。

日本語でしっかりと考えられる言語力があれば、言葉を英語に置き換えることはできますので、将来、英語ネイティブでなくとも英語を使って仕事ができるのです。

現役英語講師
はむ先生

母語レベルが外国語レベルの判断の目安です

英語を始めるおすすめ時期

母語である日本語習得も大切にしながら、英語を習得していくには、どうしたら良いのでしょうか。

私のおすすめは、

  • 日本語で2語文を話し始めた頃

から、英語を聞かせ始めることです。

子供によっては1才のお誕生日には2語文を話し始めているかもしれませんし、2才のお誕生部を迎えてもまだ2語文が出ないという場合もあると思います。

いずれの場合も、日本語で2語文が出始めてから英語を聞かせ始めれば、英語は自然に身に付きます。

現役英語講師
はむ先生

赤ちゃんを実験台にするような研究は、倫理的に問題があるためできず、科学的には証明されていません。

ここからは、個人的な経験からの知見になります。

私は、英語という外国語に抵抗することなく、母語である日本語も年齢相応に習得できる年齢は、日本語で2語文を話し始めた頃から英語を聞かせ始めることだと考えています。

個人差も大きい年齢ですが、1歳半ぐらいから2歳ぐらいにかけて徐々に始めるのが良いのではないかと思います。

▷ 1才から3才のおうち英語の始め方、こちら

▷ 0才から始めたい方は、こちら

脳科学から理解する|いつから始めても時間のかかる英語習得

早く英語学習を始めれば「半分の時間で英語が身に付きます」ということは、外国語学習に関しては起こりません。

何歳から始めても、習得までに長い時間がかかるのが言語習得です。

言語の難易度によって数年の差はありますが、母語習得ですら、英語で12年程度、日本語で15年程度かかることが分かっています。

ただし、長い時間がかかるからそこ、幼いときから始めることで後々の負担を減らす価値はあると言えそうです。

日本人が英語を身に付けるのに必要な学習時間

日本人が英語を身に付けるのに必要な学習時間

2500~4000時間

日本語を母語とする人が英語を身に付けるのに必要な学習時間数は2500~4000時間ということが分かっています。

言語センスの高い人で2500時間、そうでない場合は4000時間です。

現役英語講師
はむ先生

生まれ持った能力に関係なく、誰でも身に付けられるところが言葉の凄いところです!

英語という科目が、他の科目との違うところは、英語が言葉であるという点です。

子供が日本語を身に付けるように、必要な時間、正しい方法で英語に触れれば、才能に関係なく誰でも習得できるのです。

学校の授業で確保できる英語学習時間

10年間の英語授業
トータルの学習時間は?

1200時間

日本の学校で。小学校3年生から高校3年生までの10年間、週4回英語授業を受けたと仮定します。

その場合の合計英語学習時間数は、約1200時間です。

学校での授業学習時間数だけでは、必要な学習時間の半分にも満たないことが分かります。

私の個人的な意見では、この不足している英語学習時間を補ってあげる時期として、乳幼児期が適切ではないかと考えています。

その理由は、

  • 乳幼児期には自由になる時間が多い
  • 親が主導で生活リズムを調整できる
  • 言語形成期前半の自然に英語を学べる年齢

である為です。

現役英語講師
はむ先生

小学生以降、特に中高生の頃には他の科目の勉強にも追われますね。

脳科学から理解する|いつから始める子供の英語

先述したように、子供の英語学習を始める時期に正解はありません

子供を一番近くで見てきている親御さんが「今だ」と感じるときが、一番良いタイミングだと思います。

将来の幸せを左右するのは幼い頃の英語力の高さではありませんので、子供の成長を見守りながら臨機応変に判断していくことが大切だと感じます。

現役英語講師
はむ先生

10歳くらいまで継続できなければ、あっという間に忘れるのが子供です。

大人の方が早いが、子供の方が上手い

幼い時期に英語を学ぶメリットを最後に書きたいと思います。

それは「子供は努力なしにうまい」という点です。

私自身は学校教育で英語を学び始めましたので、中学1年生から英語に触れてきました。

現在英語を仕事にしており、学生時代のTOEICは900点を越えますが、それでもネイティブレベルには程遠いのが現実です。

わが家には、英語年齢5才の息子がいます。

0才の頃はほとんど取り組んでいませんが、1才頃から英語教材DVDや英語アニメをみたりして過ごしている子供です。

実質、英語年齢4才というところでしょうか。

そんな息子に「何となく負けた」と感じる瞬間が、ぽつぽつと起こりはじめているのです。

現役英語講師
はむ先生

結構、私、努力してきたはず…。笑

英語教育を専門にしている者として、いとも簡単に抜かされている自分を見て、とても面白いと感じます。

幼児期の息子を見ていて感じる強みは、

  1. 耳が良い
  2. 発音が良い
  3. 英語を話すことに抵抗がない

ことです。

耳がよく、発音がよいのは、子供のなので当然と思われるかもしれません。

しかし、大人になってからいくら努力しても聞こえないものが、年齢が低いというだけで聞こえるというのは、メリットの他なりません。

また、英語を話すことに抵抗がなく、ミスを恐れないことは、外国語を習得する上でとても大切なことです。

年齢が上がるにつれて、周りの目が気になり、なかなか積極的に英語を使えなくなります。

英語習得には時間がかかります。

自由になる時間が多く、言葉を自然に「うまく」身に付けられる幼児期に始めるメリットは大きいように感じます。

おうち英語を始める時期を考える、参考にしていただければ嬉しいです!

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