コラム・雑感

dweで育った大人という発想は見当外れだと思う理由

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ディズニー英語システムをネット検索していると、「dweで育った大人」というキーワードを見つけました。

多くの人が「dweのその後」について知りたいのだろうという発見と同時に、dwe教材について実際のところはあまり知られていないのだということを感じます。

現役英語講師
はむ先生

はじめまして。
英語講師の「はむ先生」と申します。

教歴は15年ほど。今は子育てをしながら、大学の非常勤講師として働いています。

私は「dweで育ったこと」と「英語ができる大人」を結び付けること自体がそもそも見当外れだと考えています。

dweで育んだ英語のみで大人としての十分な言語力を身に付けられたケースはないのではないでしょうか。

この記事では、

  • dweと英語ができる大人に因果関係がないと思う訳

について書いていきたいと思います。

※ 因果関係とは2つの要因が原因と結果の関係にあることです。

参考にしていただければ幸いです!

dweで育った大人の姿を知りたいと思う理由を客観的に捉える

dweで育った子供が大人になったときにどうなっているのだろうかという純粋な疑問は、多くの人が抱くもののように思います。

しかし、言語習得に関しては、乳幼児時代の取り組みが功を奏した結果「英語ができる大人になる」と考えることに無理があると感じます。

乳幼児期が終わるのが5歳、そこから子供が成人するまでには約15年ほどの期間があります。

大人として十分な英語力を身に付けるための日々の取り組みは、本人の意思と努力なくしては継続できるものではないと言えるでしょう。

dweは子供用教材であることを理解する

dweは質の高い教材ではありますが、それだけで英語力が身に付くというような万能な教材ではありません

日本語に置き換えてみれば分かりやすいと思いますが、「日本語はこれだけで大丈夫」と日本語版dwe教材一式を渡されたからと言って、それだけで全てに対処できるはずがありません。

特に、成人した大人としての会話に必要な語彙表現を網羅しているものではないことは確かでしょう。

dwe教材はあくまでも乳幼児期に言葉の基礎力を付けるために作られた英語学習教材です。

公式HP(上記参照)に、dwe教材は高校卒業までにならう英文法をほぼ網羅していると書かれています。

これは教材のレベルが高いという訳ではなく、日常会話に必要最低限の表現を身に付けられるということです。

例えば、高校で学ぶ英文法に仮定法がありますが、特別難しいものではなく幼児期の子供でも使う表現です。

乳幼児期の子供は意識して文法を学ぶことはできませんが、無意識のうちに言葉の規則を身に付ける能力をもっています。

※ 幼児の脳には言語発達に必要な能力が生まれながらに備わっていると主張しているチョムスキーという学者がいます。この能力を言語習得装置(Language Acquisition Device)と名づけました。

英語を体系的に身に付けられるよう考えられたdwe教材は、映像や音声を用いて英語にたくさん触れることで英語の基礎力を自然に身に付けることを目的としています。

現役英語講師
はむ先生

幼児でも「もしお母さんが~」と話しますよね!

dweを使ったら英語ができる大人に育つは幻想

早期英語教育は、子供の将来を考えた末の「親の取り組み」です。

子供は日本で普通に生活している限り、日常生活に必要のない英語を勉強したい(できるようになりたい)とは思いません。

つまり、子供側から英語DVDを見たい、英語絵本が読みたいなどと言ってくることはまずないのです。

作り上げられた英語環境下での取り組みは不自然だと感じられることもあり、賛否両論あることも事実です。

それが故、dweの良し悪しを判断する基準として「dweを使って育った大人の姿」が知りたくなるのだと私は考えます。

現役英語講師
はむ先生

あとで後悔したくない気持ちはよく分かります

一方で、その見方は、英語を身に付けることに対する解像度が少し低いようにも感じます。

大人としての高い英語力を身に付けることは、親が主に関与できる乳幼児期の取り組みで決まるほど短期間で(簡単に)身に付くものではありません

日本で生活する日本人が母語として日本語を完成させるのが15歳と言われています。

学校教育などから日本語力が日々高まる環境であることを前提にしている母語ですら、完成までに15年という長い期間が必要なのです。

外国語を(言葉を仕事ができる)成人レベルにまでに身に付けることは、そんなに簡単なことではないと言えるでしょう。

※ 英語は日本語に比べ簡単な言語体系をしているため12歳頃に完成すると言われています。

もちろん、子供が幼い時期にdweなどの学習教材を使い、日常的に英語に触れられる環境を整えることで子供自身の行動や選択が変わるきっかけになることは間違いありません。

しかし、思春期以降「親が育てた英語の芽」をどうするかを決めるのは本人の選択です。

種を植えて小さな芽出すことよりも、その芽を大きく育てていくことの方がよほど大変で、子供本人の意思なくしてできることではありません。

子供が主体的に学び身に付けた英語力は本人の努力の賜物と感じられることでしょう。

dweで育った大人の成功がdweに起因しないなら教材を使う意味は?

幼児期にdweで育った大人がいたとして、その人が英語を使った仕事をして成功を収めていると仮定しましょう。

多くの人が知りたいのは、どのようにして仕事で使える程の英語力まで高めることができたのかということです。

先に述べてきたように、その理由を「乳幼児期にdweで育ったため」と結びつけることは難しいのではないかと考えています。

一方で、乳幼児期の取り組みも「英語の基礎を身に付けるための」大事なステップの1つで、個人的にはdweは乳幼児期に英語を始める最初の教材として良いものだと思っています。

以下、dwe教材身に付けられる英語力について書いていきます。

現役英語講師
はむ先生

dweだけではダメな理由も分かるかと思います。

dweは幼児期の言葉の基礎力を育てる教材

現在、ディズニー英語システムの公式HPではdwe教材に含まれる語彙数などを公開していません

※ ホットラインと呼ばれる英語学習について相談できるサービスがあるのですが、そこで尋ねても教えてもらえませんでした。

しかし、dwe教材のみを使って合格できる英検レベルは4級が目安だということです。

個人差があるので英検3級に合格されるお子さんもいるそうですが、英検に特化した参考書でサポートが望ましいとのことでした。

つまり英検4級合格レベルの語彙数である約1300語はdweでカバーされていると言えるでしょう。

現役英語講師
はむ先生

英検3級合格レベルは約2100語です。

こちらの投稿を見てみると分かりますが、この約1300語というのは決して少ない語彙数ではありません。

旧学習指導要領における中学校英語教科書の語彙数は約1200語です。

つまり、dwe教材を使えば、親世代が中学校で習った単語を駆使して会話することができる英語力は身に付けられるということです。

英語ネイティブの子ども達が身に付ける英語力と比べる

一方で、将来を見据えて英語力を高めたいと思うのであれば、把握しておきたいのは英語ネイティブ話者が身に付けている語彙数です。

こちらの投稿が分かりやすいと思います。

英語ネイティブ6歳の語彙数は約7000語とあります。

英検2級の必要語彙数は約5000語なので、かなりの言葉数だと言えるでしょう。

英語ネティブ12歳の語彙数は(6歳のときに比べて倍の)約14000語になりますが、なんとこの語彙数は英検1級合格レベルなのです。

改めて、dweで身に付けられる約1300語という語彙数を考えてみるとその言葉数の少なさが分かると思います。

現役英語講師
はむ先生

やはり母語話者の言語力というのはすごいのです。

dweで身に付けられる言葉というのは、英語ネイティブの子ども達が家庭内で身に付けるごく基本的な言葉です。

幼い時期に身に付け、誰もが知っている重要な言葉だと言い換えることもできます。

こちらの投稿も参考になるでしょう。

学童期、思春期、青年期と日々成長していく段階において、dweだけでは不十分であることは理解に易しいのではないでしょうか。

dweで育った大人は英語に肯定的なイメージを持ち易かったかもしれない

最後に、dweで育った子供が大人になるまでに受けた生活環境からの影響について書いていきたいと思います。

dweで育った子供がその成長過程において影響を受ける要因には、教材がdweであったことも少しは関係するかもしれません。

しかし、子供が良くも悪くも強い影響を受けるのは、早期に英語に触れさせることを選択する親御さんの価値観にあると考えています。

ここからは経験から書いていく内容になりますので、そのつもりで一読頂けたらと思います。

現役英語講師
はむ先生

早期英語は子育ての一部だと私は考えています

英語教育に重きを置く家庭で育てられる良し悪し

私は乳幼児期から英語教育を始めることは、子育ての一環として英語を取り入れるということだと考えています。

言い換えると、子育ての一部として生活にと入れられなければ、幼い子供の英語教育はなかなかうまく進まないと予想できます。

年齢が低い子供ほど何かを意識して学ぶ「勉強」をすることはできず、英語に自然に触れられる環境を整えることで英語を身に付けていくからです。

最初は、

  • 英語絵本の読み聞かせる
  • DVD教材を一緒に見る

ことなど、御さん自身が英語に触れる習慣作りからスタートします。

言葉の習得は気が向いた時に取り組むくらいでは身に付きませんので、体調が悪いとき以外は毎日取り組むことが必要です。

英語の取り組み時間は(年齢にもよりますが)1日1時間程度でしょうか。

※ この日々の取り組みを継続しやすい教材と仕組みづくりを提供しているのがディズニー英語システムだと私は思っています。

現役英語講師
はむ先生

1日1時間の取り組みの場合、成果が見え始めるのは2年後くらいからです。

皆さんも想像ができるかと思いますが、dwe教材やサービスを利用しても年単位で続けられるご家庭はなかなかいないのが実情です。

これが誰でもできることなら、日本人で英語に苦労する人はいなくなると思います。

メルカリなどでdweの中古市場ができあがっているのも、恐らくその為です。

言い換えると、子供の英語基礎力が身に付くまで環境を整えた親御さんは相当な努力家であり、英語教育に熱心であると言えるのです。

語学は継続が何よりも力になる

英語教育に熱心な親を持つ子供が、親御さんの想いを受けて高い英語を身に付けるかどうかは誰にも分かりません。

一方、言語力を高め続けるには継続することが全てです。

英語に限った話ではありませんが、物事を継続するには子供本人の意思が必要不可欠だと言えるでしょう。

親御さんの熱心さ故、子供に無理強いしてしまうことは注意したい点です。

現役英語講師
はむ先生

熱の入りすぎには要注意です

人間の動機(やる気)に関する理論の中で、心理学の分野で知られている自己決定理論を紹介したいと思います。

人間は以下3つの欲求が満たされることでより強い動機が生まれると言われています。

  • 自律性(誰から強制されたものではなく自分で選んでいるという感覚)
  • 有能性(自分には十分に能力があるという感覚)
  • 関係性(周囲と良い関係を築けているという感覚)

長期的な学習行動が求められる高い英語力の獲得には子供自身に意欲を高めてもらう必要があります。

子供の年齢が幼くとも同じです。

子供の意思(やりたいこと)を無視してはいけないということです。

親御さんが独走しがちになる場合には、子供の自律性・有能性・関係性を満たしてあげることを意識すると良いのではないかと思います。

参考にしていただければ幸いです。